2016年7月18日月曜日

議員定数を減らすことは誰のためになるのか?

7月13日(水)に議員定数調査特別委員会がありました。
引き続き、議員定数についての議論です。

減らす明確な理由はあるのか


まず定数維持を訴える武中議員から口火が切られ、削減論者に対する問いとして4点が挙げられました。
なお手元のメモから書き起こしているため、発言そのままではない点をご了承下さい。

1.無投票だったことを理由に削減というが、定数を減らせば選挙になるのか。
他町村をみれば新たな立候補者がほとんど現れないのが現状であり、減らしたとしても結局無投票だったりする。

2.少数精鋭の議会という意見もあったが、単純に定数を減らせばそれは実現するのか。
町村の議会では本業がある中でできる限りの活動をしており、それぞれ本業の分野や属性の視点から行政に対して声を届けているのが現実。

3.なぜ町民は減らすべきと言っているのか。
今の議会に対する不満の声があるのは確かだが、減らせば町民にとっては身近な議員が減ることになる。説明すればわかっていただけること。

4.議会には様々な産業や立場を代表する多様な視点があるべきではないか。
人口は減少しているが、産業の数や集落の数が減少しているわけではない。多様な属性の議員がいたほうが町民全員にとってよいことだ。

冒頭のこの論点を中心に議論を展開されました。武藤の発言の要旨は下記の通りです。

今でも削減の立場は変わらないが、議員になってから議会の現状がわかってきた部分もあり、武中議員の意見は基本的に理解できる。
ただしそれ以前に、議会の定数を減らすべきという声が多くあがってきている状況、そもそも議会の意義を説明しなければわかっていただけない状況があるということもまた現実。
こうした状況への責任を「削減」という形で重く受け止めるべきではないかと考えている。

また単純に減らすだけではいけない。
新しく議員が出られる環境づくりや議会の活動内容を伝える努力、例えば政務活動費の創設や議会としての活動報告会や町政勉強会、議事録のウェブ公開なども考えられる。
これから取り組むことをセットで議論しなければならない。

定数の変更は特に慎重に

以上が要点ですが、挙げられた点についてはこのように考えます。

4点の各論に対する考え


まず1ですが、定数を減らすことが即選挙になるわけではないと私も思います。
だからこそ議会として新しく候補がでるように取り組まなければなりません。
「こういう議会にしていく」「若い人や女性にも立候補してもらいたい」というような明確なメッセージと行動を示す必要があるのではないでしょうか。

2の少数精鋭の実現については、定数を減らせば確かに少数になりますが、それだけでは精鋭にはなりません。本格的に活動するにはそれなりにお金も時間もかかることです。
少数精鋭と呼べるような議員活動は専業でなければ難しいと考えていますが、専業も可能な議員待遇を用意することに対して合意が得られるでしょうか。

様々な議員活動(詳しい説明はこちら

3の町民に説明すればわかっていただける点については、私も機会があればお話して、確かにご理解いただけることも多いです。
問題はそうしたことをきちんと今までちゃんと説明してこなかったこと、説明するまでは「減らしたら?」と言われてしまう状況をつくってきたことをどう受け止めるのかという点です。

4ですが、様々な立場を代表する議員が多様にいるべきだと私も思っています。
正直申し上げて今の現状でなければ、私も立候補したかどうかわかりません。

私が評価に値する活動ができているかはみなさんの判断によるところです。
しかし多少なりとも余所から来た私のような立場の意見を町政に届けることができるのは、他の町村よりも多く維持している議員定数もひとつの要因だと思います。

定数を減らすことは誰のためになるのか


議論の後半ででてきましたが、もっとも大事な問いは「定数を減らすことが結局誰のためになるのか」ということでした。これは本当に大事なことです。
そして私を含め全員がこれに明確に反論することができませんでした。
今一度、この点を考えてみたいと思います。

町民にとっては議員が減れば、今まで自分が身近に感じて話しやすかった方が議員でなくなる可能性があります。今まで以上に議会が一歩遠い存在になってしまいます。
自分が支持していなくても、どの議員も必ず応援する人がいるから議員になっています。中には気に入らない方もいるかもしれませんが、一定の多様性の確保も大事です。

また議員にとっては、人数が減れば一人あたりの負担が増えるかもしれません。
今までもなり手不足でしたが、負担が増えるとなればより一層なり手がいなくなってしまうのではないでしょうか。
あるいは本業との兼ね合いにも限界がありますから、議会活動が一層低下するかもしれません。

財政的にも議会運営にかかわる経費が圧迫している状況ではないと理解しています。
前回の定数削減時には行政改革のおり、また夕張市の財政破綻が報じられた頃でもあり、財政の見直しがありました。
しかしその後浦河町として一定の財政健全化を図っており、決算書や各指標をみれば現在は問題化する状況にはないと言えます。

行政にとっては都合が良い議員削減


一般論になりますが、実は議員が減って一番都合が良いのは、執行者=行政になります。

地方議員の仕事は、企業で言えば社外取締役に似ていると言われたりします。
企業=行政がしっかり仕事をしているかどうかを社内事情とは異なる視点で指摘し、監督する役割です。
これによりワンマン経営を防いだり、身内の論理とは異なる新たな発想を持ち込むことで株主=住民の利益につながる経営を促します。
ただ数が多ければいいものでもありませんが、首長の一方的な考えによる行政執行を防ぐ安全弁の数は多いほうがよいでしょう。数が少なければ執行側への取り込みも簡単です。

では、他にも定数を減らしたいと考える人はいるでしょうか。
これも一般論になりますが、自分の支持者に「定数を減らす」と約束している議員もそうかもしれません。上記のような議論をする以前から支持者から強く定数減を訴えられたり、単に人気取りのために主張している場合です。

私自身も立候補時に「定数は減らすべき」と主張していましたから、簡単に維持に回るわけにはいきません。今でも自分たちの身を削る姿を通じて、議会としての覚悟を示し、信頼を得る必要があると考えます。
しかし同時に、そもそも若い人や女性の新しい候補者が出やすい仕組みも考えずに、ただ減らすだけでは何の意味もありません
質の高い議会実現のための議論をもう少し続けたいところです。