2016年7月22日金曜日

アエルの決算は減収増益。本質的な問題は意思決定の仕組みでは

7月19日(火)の総務産業建設常任委員会を傍聴しました。

旧野深小学校利活用の事業計画変更


今年の1月に処分の決まった旧野深小学校ですが、そのサービス付き高齢者向け住宅の事業計画に一部変更があった旨の報告がありました。

当初9月に予定していた入居開始ですが、10月になりました。また部屋数は45室(50名)から44部屋(56名)に、職員体制は1名増加の19名になりました。
名称は「ルピナス館」だそうで、ウェブサイトも完成したようです。

JR日高線


6月議会では私も取り上げたJR日高線ですが、米谷議員も質問しており、その際に所管委員会への現状報告を求めていました。

被災から現在までの経緯の報告がありましたが、直近では間もなく全道町村議長会及び日高総合開発期成会として、関係省庁や国会議員に対して早期復旧の陳情が行われる予定です。
また、日高管内各町と北海道日高振興局でとりまとめて昨年11月に提出した「JR日高線の利用促進に関する検討報告書」が配布されました。

うらかわ優駿の里振興株式会社(アエル)の決算報告


6月24日にアエル運営会社の株主総会が開催されました。
浦河町は当社の株の51%を所有しているため、所管委員会である総務産建にもその決算報告がありました。


前年度比で減収増益ですが、経営は依然として厳しい状況です。
なぜなら「増益」といっても本業での儲けである営業収益(損失)は赤字、「営業外収益」で利益を確保しています。そしてその増益分は主に、町からの指定管理料増額に伴うものとみられます。

アエルの経営については色々と言われていますが、そもそもどう評価すればよいのか非常に難しいものだと感じています。

今までの経緯と現状、そして将来像がごたまぜになったまま語られて、一体何について議論されているかもわかりづらいです。
きちんと説明しなければならないのでしょうけれども、現時点ではまったくうまく伝わっておらず、うまく伝えようにも慎重にしなければ誤解を招きかねず、説明自体に二の足を踏むことも多いのでしょう。そして不信感を招くという悪循環です。
すべては無理ですが、ここで少しだけ状況を説明してみたいと思います。

まず今年良かったのは、乗馬施設への案内板が設置された点です。

設置された乗馬施設への案内看板

3年前、私が浦河に来た時から何度もお客さんに口頭で説明しようとして難しかったのが、この乗馬施設への入口でした。ホテルの正面入口とは異なるため、せっかく乗馬をしたくても、行き方がわからず迷った方が多かったのです。
看板などたいした金額ではないのでしょうが、非常に厳しい経営状況の中、ようやく投資できたのだと思います。

簡単に考えれば「なぜ今までつくらなかったのか」と思うかもしれませんが、アエルのもっとも大きな問題は、そもそもこの程度の投資すら難しい組織の意思決定の仕組みとその無理解にあると思っています。

教科書通りのことを言ってみれば、経営の立て直しのためには新規顧客獲得はもちろん、もっとも大切なのは顧客満足度を向上させ、リピーターを増やし、価値を最大化させることです。現場がきちんと顧客に向き合い、どうすれば喜んでいただけるかを考え、サービス向上に取り組めばよいということになります。
しかしそれこそがなかなか難しいのだと思います。なぜでしょうか。

現場は一つ、意思決定は三つの利害関係者


アエルはまずは観光宿泊施設ですから、一番の顧客は観光客のはずです。
ところが、その経営には取締役、株主、議会という三者の利害関係者が関わっています。顧客にかかわる現場はひとつなのに、意思決定者は三者もいるのです。そしてこの三者というのは、ほとんどすべて浦河町民なのです。

これでは現場は顧客に喜んでもらうよりも、経営の意思決定にかかわる浦河町民の声をまず大事にしなければと思ってしまうのではないでしょうか。
しかし町民は、上述の通り本来の顧客ではありませんし、またそのほとんどは宿泊業経営のプロでもありません。
これでは経営はうまくいかなくて当たり前なのではないでしょうか。

今のアエルは、観光振興(A)と町民福祉(B)の両方を実現する施設にする方向性で合意した過去があると聞いています。
今も賛否両論あるかと思いますが、喧々諤々の議論の末の合意と聞いていますから、現時点ではその当時の判断を尊重したいと思います。
そして私としては、その(A)と(B)の折衷状態としては(それが良いかどうかは一旦置いておき)、まだうまくいっているほうではないかと思っています。

(A)と(B)というまったく異なる考えの両立ということで、私には矛盾に思います。
しかし今はその矛盾に現場が必死で向き合って対応しているのですから、少なくとも意思決定の三者のうちのひとつである議会は、その経営について多くを口出しすべきではないと私は考えています。
議会として判断すべきなのは、関連する町からの支出は目的に適ったものなのか、そしてその金額は妥当なのか、という点のみだと考えています。

なお(B)の側面としては、パークゴルフ場、サッカー場、合宿棟、遊具公園、銭湯などが挙げられると思います。
これを町単独で維持管理するとなればそれ相応の負担を覚悟しなければなりません。これと現在生まれている観光経済効果を合わせて、支出の妥当性を考える必要があります。