2016年4月11日月曜日

趣味が公益に?遠別のひとり観光協会から学ぶまちの魅力と価値

2月末の話になりますが、道北の遠別というまちに行ってきました。
友人の「はらちゃん」ことNPOえんべつ地域おこし協力隊の原田さん。浦河には2回も来てくれているので、私もいつか遊びに行きたいと願っていたのですが、ようやく時間をつくることができました。

ちょっとおじさんくさいはらちゃん(30)

今回はその活動の視察の意味も兼ねて、江別市議会議員の堀さんも誘って訪問しました。
そのときのざっくりとした様子は下のリンクから見ていただけるとおわかりいただけるかもしれません。

【酔いどれ】遠別町に浦河町と江別市から友人が視察(笑)に来たレポート


誤解やお叱りも受けそうですが、完全な自腹での個人的な訪問であることを念のためお伝えしておきます。
浦河町議会からは個人の議員活動に対する費用は一切出ません。きちんとした視察の場合であっても政務活動費はなく、委員会や議会全体としての出張のみ日当などが支給されます。

また、私もはらちゃんのように自由気ままに綴りたい気持ちはやまやまなのですが、一応こちらは議員としてのブログになっていますので、ちょっと残念ではありますがもう少し真面目なレポートを書くことにします。

はらちゃんの活動紹介


私も地域おこし協力隊だった時、とあるイベントで知り合ったときから何かとご縁のあるはらちゃんなのですが、ここではらちゃんの活動の様子を私からの視点で少し紹介してみます。

1.キャッチコピーづくり


「別れが遠くなるまち、遠別町。」

素敵なキャッチコピーじゃないですか?
これは実は知名度の低い「えんべつ」という町名の漢字を説明する際に「別れが遠くなると書いて遠別です」と思いつきではらちゃんが編み出したものです。
これまた勝手につくった遠別町PVのタイトルでもあるのですが、いつの間にかふるさと納税のお礼品を送る箱にも印字されていました。

もうすっかりオフィシャル感漂うキャッチコピー

もとからある「いきいきと里住夢(リズム)あふれるまち遠別町」という公式キャッチコピーよりしっくりくるのは私だけでしょうか。
小さな自治体だと良くも悪くもこのあたりがゆるく運用されていたり、人ひとりの影響力が大きいものだとあらためて感じます。

キャッチコピーとは違いますが、趣味のイラストに一言つけてつくっているもの(なんと呼べばいいかわかりませんが)も好きです。最近ではポストカードにしたり、LINEスタンプをつくったりもしているそうです。

ところで、浦河も何かいいキャッチコピーがほしいとずっと思っていました。
そうはらちゃんに言ったら、ひょんなことで自分でつけてそのまま忘れていたものを引っ張りだしてくれました。


こうしてみるとそれっぽく見えるから不思議です。

2.情報発信


はらちゃんが運営しているブログがこちらです。地域おこし協力隊の公式ではなく、個人的にはじめたものです。

inakalife-いなかくらし


このブログを通じて私も遠別のことを知りました。
自分の活動や趣味のことなどなんでも書いているのですが、ちりも積もれば山となると言いますか、今では遠別の施設や飲食店をウェブで調べるとほぼ間違いなく上位にはらちゃんのブログが表示されます。
趣味の写真とあわせてとてもよい雰囲気で紹介されているのですが、遠別に限らず近隣の町村のめぼしい情報も網羅されていると思います。

夕景の中自撮りするはらちゃん(30)

今回も「旭温泉」や「スナック演歌」、「千世本」、「金比羅神社」とウェブ上ではお馴染みの(?)スポットを巡り、お馴染みの人と出会いました。

3.まちの案内人


今回、時間を割いてもらってはらちゃんに少しまちを案内してもらいました。
やはりちょこちょことお客さんを案内する機会があるそうです。

ところで私はずっと宗谷岬(稚内)のすぐ手前の遠別と、襟裳岬のすぐ手前の浦河とではどこか似ているところがあると感じていました。

北海道はただでさえ広くただ通過するだけのまちがとても多いですが、そういうまちも地域のひとに案内してもらうと逆に普通の観光地では出会えないような魅力と出会うことができます。
そしてその魅力とは必ずしもそのまちの人々が自慢して紹介したいものではなく、他所から来た人々が勝手に魅力と感じてもらえる場合も多いのです。
これは私自身、地域をご案内する機会が割と多いので感じることです。

これがまさにマーケティングの考え方ですが、遠別や浦河のようなまちは観光地とは違って、むしろいつも通りすぎてしまいがちな北海道のまちだからこその魅力を訪問者が発見したがると言えるかもしれません。

他所の人々が勝手に見出すそのまちの価値


例えば今回、まちの中心にある昔ながらの洋食屋さんでランチをしました。

席についてメニューを一通り眺め、注文しようと店員さんを呼びました。
同行した堀さんが注文の前にひとつ、ちょっとした質問をしました。
対応してくれたのはまだ10代と思しき男子だったのですが、「いや、それわかんないっす」と言ったまま、奥に聞きに行くでもなく堂々としているのです。
堀さんは「あ、え、そっか...まあ、いいや。これちょうだい」とわからないまま注文することになりました。
しかし、これが私たちにとっては価値でした。

こういう対応は現代の日本の都心部ではもうあまり出会えないですよね。なぜなら能力不足として解雇されてしまうか、その場で瞬時にクレームが入って指導されてしまうからです。
極端なことを言えば、昔あったような、あるいは海外ではしばしばあるようなこんなやりとりも、日本では遠別にまで来なければ体験できないのです。

お店の名誉のために言い添えておくのですが、はらちゃんに聞けば最近雇われたばかりの子だったとのことで、次に遠別に行っても体験できないかもしれません。
またその後出てきた料理は文句なく美味しかったですし、むしろ「どんな風に出てくるのだろう」とワクワクしながら料理を待った楽しいランチとして忘れられない遠別での一コマでした。

ここで私がお伝えしたいのは、あくまでひとつの見方として、地域ではもしかしたらあまりよく思われていないことでも、他所から来た人たちが勝手にそこに価値を見出すことがあるということです。

和風カットステーキ、とても美味しかったです

遠別は海のまちなのに、特産品の新鮮なたこが簡単に手に入りません。
遠別の飲み会は、一次会からスナックでした。二次会で居酒屋に行き、三次会は役場職員の自宅でした。
こうしたことも珍しく、私たちにとってはかけがえのない価値になりました。
(遠別の方々には大変ご迷惑になったかもしれませんが...。)

結果的な観光振興としての勝手に始める個人活動


大事なのはどれもはらちゃんが仕事の合間に、勝手に好きなことやものを大切にしながら生活しているだけということです。
今回案内してもらった海の中に建つ金比羅神社は、実は遠別ではなく隣町の初山別にあります。
これが例えば自治体の業務として依頼される仕事だったら紹介することすら難しいかもしれません。

隣町の神社を案内するはらちゃん(30)

でもこれはあくまではらちゃんの個人活動です。
あまり背伸びせずに、地に足ついた感覚を大事にしていました。
今回はそんなはらちゃんに会いにいったわけで、はらちゃんがいなければあえて遠別に行くことがそもそもなかったのではないかと思います。

そしてこれが旅だったのか観光だったのか、視察だったのか会いに行っただけなのか、それは帰ってきた今も正確に定義できません。
はらちゃんにとっては、仕事の合間に自分の住んでいる地域の好きなものを紹介して、来てもらったついでに楽しんでもらっただけのことです。

しかし、地域にとってはお金を落としてもらって、情報発信につながって、私たちにとっては、地域の活動にも参加させてもらったり、楽しくお酒を飲ませて頂いたり、新たなご縁もできました。
これは単に業務として訪問するだけでは得られないものです。

この勝手に始めたはらちゃんの個人活動(=趣味)が、まちにとってはいわば「ひとり観光協会」(=公益)のような機能を果たしており、結果的に観光振興につながってる事例ではないでしょうか。
と、事例紹介レポートのようにまとめてみました。

こういう事例紹介にしてしまうと「はらちゃんのような存在が、浦河にもひとりは欲しいですね!」と、最後にないものねだりをしてしまいがちです。
しかしはらちゃんが私たちにしてくれたように、浦河に来てくれた方々を自然体でもてなすことで、まちの一人ひとり誰だって「はらちゃん」になれると思っています。
はらちゃんほどのおもてなし力はありませんが、浦河に来てくれた時の様子はこちらですので、参考までにご笑覧ください。

【北海道浦河町】元地域おこし協力隊で現若手議員さんのお宅に2泊転がりこんだ旅日記


私としてはもっと世の中に遊び心と余裕が生まれることを切に願っております。